情報の早期入手
一般の商人や生産者よりも1日早く横浜の糸価の上昇を知ることができれば、大量の生糸を安価なうちに買い占めて巨利を博することができるし、糸価の下落を1日早く知ることができれば、インターネットFAXのように買付けを中止して損失を少なくすることができるというわけです。
もちろん、それでも実際には予測を誤って損失を蒙ることがあったが、下村の急速な致富の最大の手段は、横浜糸況に関する情報の早期入手にあったといってよい。
下村は、おそらく専属の「早飛脚」を抱えて、前橋を中心とする仕入地と横浜の間を頻繁に往復させていたのでしょう。
かかる情報独占を通じて、下村は自己の生きる時間世界を、産地の人々より1日分だけ横浜の内外商人のそれに近づけることができたのであり、そのわずかな差異を通じて巨大な利益を入手したのです。